グリーンイノベーション基金事業について

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする目標を掲げました。この目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするものであり、実現のためにはエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要があります。このため、経済産業省は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げました。
なお、NEDOは本基金事業の取り組みや関連技術の動向などをわかりやすく伝えていくことを目指し、「グリーンイノベーション基金事業 特設サイト」を公開しています。
https://green-innovation.nedo.go.jp/

2022年度「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」プロジェクト

私たちのバスEMSプロジェクトは、NEDOが2022年度より実施する「グリーンイノベーション基金事業/スマートモビリティ社会の構築」プロジェクトに採択されました。
https://www.nedo.go.jp/news/pres/AA5_101560.html

バスEMSプロジェクト

~路線バスEV化および交通・地域のカーボンニュートラル化を実現する運行管理/需給調整一体型エネマネシステムの開発・実証~

2050年カーボンニュートラル(以下、CN)の実現に当たっては、運輸バリューチェーン全体におけるCO2排出の最適化が極めて重要であり、産業の垣根を超えた地域全体での取り組みが重要になってきます。2021年11月に開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)で言及されたとおり、CN達成の潮流のなかで自動車から排出されるCO2削減は大きなテーマの1つであり、事業者にとって車両の電動化を実現する必要が生じています。また、国内においては、バスは年間400万CO2-トンを排出し、陸上の公共交通では鉄道についで大きく、バスの電動化はCN達成において、非常に重要な取り組みとなります。

しかし、電気バス導入は車両価格だけでなく、ライフサイクルでの経済性の観点から導入障壁が高く、また、エネルギーの効率的な利用の観点では、地域のエネルギー需給との調整が必要になるため、地域単位での導入モデルの構築が求められています。

そこで、本プロジェクトでは、みちのりグループ、東京電力ホールディングスが事業活動を通じて培ってきたそれぞれの強みを活かし、路線バスの効率的な運行を可能とするバスEMSを開発し、電気バスの持続可能な導入モデルの確立と地域エネルギーマネジメントの取り組みを推進していくことを目指します。

この度、本プロジェクトがグリーンイノベーション基金事業に採択されたことによって、数台規模ではなく都市全体で大規模に電気バスの導入を加速することができるようになり、これは国内初の本格的な取り組みとなります。

取り組み概要

2030年までのグリーンイノベーション基金事業では、3つのステップでバスEMSの実現を目指します。

【ステップ1】 2022年~2024年まで
みちのりグループのバス会社3社合計で15台程度導入する電気バスを活用して、バスEMSを構成する要素技術を開発します。

【ステップ2】 2025~2027年まで
3社で年40台の早いペースで電気バスの導入を進めます。大規模な電気バスの環境下において、統合的なバスEMSの機能をテストし、磨き上げます。

【ステップ3】 2028年~2030年まで
今回の実証拠点全域で電気バスへの置き換えが完了します。都市の多様な運行環境でバスEMSをテストすることで最終的な実装を目指します。

この3つのステップを経て完成したバスEMSが、国内外で電気バスの普及を強力に後押しすると考えております。

実証フィールド

みちのりグループの関東自動車、福島交通、茨城交通の各営業所において、2023年から電気バスの導入を進め、2030年までに3社合計で218台の電気バスを導入します。特に、宇都宮市においては、市内の大半の路線バスが電気バスに置き換わる、日本初の本格的な導入モデルとなります。

期待される効果

バスEMSの活用によってディーゼルバスから電気バスへと転換が進み、再生可能エネルギーの利用が広まれば、みちのりグループのバス1台で、一年間に27トンのCO2を削減することができます。

さらに、みちのりグループで進めるMaaSのような利便性を向上させる取り組みが進むことで、自家用車から公共交通への転換を進めたり、電気バスの導入が地域の調整電源となり太陽光をはじめとした再生可能エネルギーの導入を後押したりすることで、地域に大きな波及効果が期待できます。

将来、この取り組みがみちのりグループ全体に広がることで、年間約4.5万トンのCO2の削減につながり、さらにそれが国内の他の路線バス事業者にも広がることで、日本全体の脱炭素化に貢献できると考えております。